福留開発株式会社 様

リアルタイムデジタルツインで遠隔施工の「60%の壁」を突破

リアルタイムデジタルツインで遠隔施工の「60%の壁」を突破

intdashを活用し、搭乗操作に匹敵する作業能力と高い安全性を実証

仁淀川用石地区の河道掘削工事。遠隔操作の油圧ショベルが土砂を積み込む空撮
仁淀川用石地区の河道掘削工事。遠隔操作の油圧ショベルで土砂を積み込む。

「慣れ次第で、搭乗操作に匹敵する操作が可能だと感じました。」

— 遠隔操作オペレーター

プロジェクト概要

福留開発株式会社は、高知県を拠点に公共土木工事を手掛ける地域密着型の建設会社です。道路、河川、造成、防災・減災関連工事で培った施工力を基盤に、ICT施工、3次元測量、3D設計データ、出来形管理などを活用した建設DXを積極的に推進しています。

同社が元請として施工管理を担う仁淀川用石地区の河道掘削工事(高知県土佐市)では、約52,000m3の掘削を実施。この現場を舞台に、2026年6月1日から7月31日にかけて、遠隔操作する建設機械と現場地形をLiDAR点群でリアルタイムに再現するデジタルツイン基盤を用いた施工実証が行われました。実証は、福留開発(施工者)、日立建機株式会社(リアルタイムデジタルツイン基盤の提供)、株式会社ベクトロジー(パノラマビジョンシステム)、株式会社ユニキャスト(3Dデータ化ソフトウェア)、アプトポッドの5社により実施され、対象機械には油圧ショベル ZX200A-7(20tクラス)を使用。多様な現場データの共有・収集基盤にはintdashが採用されています。

工事
令和7-8年度 仁淀川用石地区河道掘削(その2)工事
実証期間
2026年6月1日〜7月31日
実施体制
  • 福留開発(施工者:遠隔施工における安全性と生産性の評価・検証)
  • 日立建機(リアルタイムデジタルツイン基盤の提供、全体統括)
  • ベクトロジー(車載パノラマビジョンシステム)
  • ユニキャスト(3D地形データ化ソフトウェア)
  • アプトポッド(データ基盤intdash、オペレーター用GUI)
対象機械
遠隔対応・ICT油圧ショベルZX200A-7(20tクラス)

プロジェクトの背景と課題

遠隔施工を「施工のオートメーション化」へつなげる

国土交通省が掲げる「i-Construction 2.0」では、建設現場の生産性向上に向けて施工のオートメーション化が重要な柱となっています。一方、従来の建設機械遠隔操作は長い歴史を持ちながらも、搭乗操作と比較した作業能力が約60%にとどまることが課題でした。

福留開発は、施工のオートメーション化を現実のものにするためには、まず遠隔施工の作業能力を搭乗操作と同水準まで引き上げる必要があると考えました。そこで着目したのが、重機の映像だけでなく、建設機械と周辺地形の位置関係、掘削の進捗などをリアルタイムに把握できるデジタルツインです。実証では「搭乗操作比80%以上の作業能力」と「搭乗操作と遜色のない作業計画」を目標に掲げました。

河川工事特有の安全リスク

本工事は、一級河川・仁淀川本川の流下能力を高めるため、土佐市用石地先で河道を掘削するものです。河道内は大雨や台風による増水が起こりやすく、建設機械、車両、保安設備を速やかに退避できる態勢が欠かせません。日常的な天候・河川情報の収集に加え、人が危険箇所へ立ち入る機会を減らすことも大きなテーマでした。

プロジェクトのシステム概要

システム全体像:移動式サイトセンサ(LiDAR/カメラ)と無線メッシュネットワークからのデータを intdash ローカルサーバで統合処理し、操作室のデジタルツインアプリケーションへリアルタイム伝送。軽量化したデータはクラウドサーバを経由して外部拠点からも参照できる
システム全体像

本システムでは、複数の移動式サイトセンサ(LiDAR/カメラ)を無線メッシュネットワークとともに作業箇所周辺に設置・構成することで、フィールド全体のLiDAR点群と映像、および建設機械からのカメラ映像を、intdashローカル(オンプレミス)サーバを介して、離れた操作室へリアルタイムに伝送します。オペレーターは複数の映像に加え、デジタルツイン上で建設機械とダンプトラック等との位置関係、周囲地形、法肩までの離隔、掘削断面の進捗を確認しながら操作します。さらにintdashクラウドサーバへ軽量化したデータを転送することで、遠隔拠点からのデータ参照も可能にしました。intdashは、現場のマルチモーダルなデータを統合的かつリアルタイムに処理・共有するデータ基盤として、この仕組みを支えました。

操作室。オペレーターの手元と、カメラ映像およびLiDAR点群によるデジタルツインを表示するモニター
離れた操作室から油圧ショベルを操作。カメラ映像とLiDAR点群によるデジタルツインを同時に確認

導入効果

  • 最大101% ICT掘削の作業能力
  • 80% 実証後半に安定維持
  • 最大102% 積込み作業で記録

※作業能力は同現場での搭乗操作実績を100%として比較。実証時の記録。

カメラ映像だけでは得にくい「現場全体の把握」

搭乗操作と比べると、遠隔操作では作業性と状況把握能力が若干低下する場面がありました。しかし、従来のカメラ映像だけを用いた遠隔操作と比較すると、デジタルツインによって状況把握能力は格段に向上。俯瞰映像を多用する必要もほぼありませんでした。

「全体を把握しやすく、作業中でも次に行う作業の段取りを考えながら操作できます。搭乗操作時に無意識に行っている当たり前が、遠隔でも当たり前にできる。その“繋ぎ”の役割が素晴らしいと感じました。」

— 遠隔操作オペレーター

法肩までの距離を直感的に把握し、転倒リスクを低減

従来の遠隔操作と同様に、オペレーター自身は危険な作業現場から離れて操作できます。今回の決定的な違いは、LiDAR点群によって遠隔建設機械と周辺地形の位置関係を常に把握できることでした。法肩までの離隔距離を直感的に確認できるため、地山崩壊などに起因する重機転倒リスクの低減につながりました。また、周囲の状況を常時把握でき、安全確認に要する時間も搭乗操作と変わらないという評価が得られました。

搭乗操作に匹敵する作業能力を記録

ICT掘削作業では最大101%の作業能力を記録し、実証後半には約80%を安定して維持しました。積込み作業でも、多くの作業日で60%以上を記録。後半には96%、102%と、搭乗操作と遜色のない水準に達しました。通信環境が良好で、オペレーターが操作に習熟すれば、遠隔操作でも搭乗操作に匹敵する生産性を実現できる可能性が示されました。

安定した通信とリアルタイムデータが操作性を支える

実証初期には無線通信の断線、瞬断、遅延が発生し、映像の遅れを感じる場面がありました。その後、無線通信環境の構成を変更すると映像供給が安定し、違和感や遅れをほぼ感じずに操作できるようになりました。LiDAR点群の表示には若干の遅れがあるものの、状況把握に支障を来すレベルではなく、安定した現場再現性が確認されました。

「データの遅延を感じないことは、遠隔施工で最も重要な部分です。本実証で記録した作業能力は、intdashなくしては得られませんでした。」

— 福留開発株式会社 ICT推進室

今後の展望

今後の技術活用と建設業界への期待について、福留開発株式会社に伺いました。

Q. 今後、どのような現場で活用していきたいですか?

今回の現場は比較的起伏が少なく、工種も掘削が中心で、施工上の障害が少ない現場でした。一方、実証を通じて、道路改良工事や山地砂防工事など、より難易度の高い現場でこそ効果を発揮する可能性が高いと感じています。

点群の自然色表示や建設機械の3Dモデル表示などの改善を進め、より複雑な現場に対応できる仕様とすることが必要です。遠隔施工による土工作業だけでなく、施工管理の分野でも活用と実証が進むことを期待しています。

Q. 建設業界全体にとって、この技術にはどのような意味がありますか?

建設業界の働き方そのものを変革する可能性を持つ技術だと考えています。今回、遠隔施工の作業能力が従来の約60%という壁を超えることができると実証されたことから、リアルタイムデジタルツイン基盤の必要性がこれから広く認識されていくのではないでしょうか。本技術により施工のオートメーション化に向けた動きが更に加速することと思います。

Q. アプトポッドとintdashへの今後の期待を教えてください。

intdashは、リアルタイムデジタルツイン基盤の根幹を担う存在だと感じました。今後さらに大規模な現場で活用されるために、より膨大なデータにも対応できる進化を期待しています。

日立建機株式会社からの評価

本実証で用いられたリアルタイムデジタルツインシステムは、日立建機株式会社がアプトポッドとの業務提携に基づく協業のもとで開発を進めているものです。日立建機の狙いは、機能・非機能要件を明確にする「技術実証」と、遠隔操作から遠隔施工へ発展させる「価値実証」でした。現時点で、双方を具体化する道筋が得られています。

データ基盤にintdashを採用した理由として、業務提携に基づく協業と開発成果の活用、サポート体制、多様なリアルタイムデータを統一的に扱えることが挙げられました。突発的な障害や改良要望への対応を含め、一定のパフォーマンスを持つリアルタイムデータ共有・収集システムを短期間で構築できた点を評価しています。


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